ジャズヴォーカルのための練習ガイド

最終更新日:2003/05/31
作成年月日:2000/05/25
文筆: 村山 秀樹
文筆: 久保田 浩
協力: 近藤 淳

目次

0.はじめに
1.音域とキー
2.譜面
3.伴奏者への事前説明
4.練習時あるいはセッション参加の心構え
5.スキャット
6.英語について
7.楽器演奏
8.トレーニングやスクール


0.はじめに

 この練習ガイドは、ジャズヴォーカル初心者を対象に、初心者が知っておくべき必要最低限の各種ルール、心がけておくべきこと、準備しておくべきこと、実際の場で遭遇するであろう出来事とその対処法などについて、各種セッションに参加した経験からまとめたものです。したがって一部伴奏者について触れている部分もあります。

 もちろん、このガイドとは異なる考えもあるでしょうし、これら以外の考慮点もたくさんあると思います。不足分については今後追加していくこととし、納得いかない部分については読者の判断に委ねることにしたいと思います。

1.音域とキー

 自分の声の音域は必ず知っておきましょう。これを知らずして自分用の譜面(自分のキーの譜面)を書くことはできません。
 また、単にその音域の声が出る、ということと、その音域で確実に歌える、ということは『別ものである』ということも理解しておきましょう。

 曲に応じて、自分の音域の範囲内の低めに設定したキーで歌うか、高めに設定したキーで歌うか、などの研究の余地もあります。試行錯誤で、その曲に一番合う自分のキーを見つけましょう。また、信頼できる人のアドバイスを受けることも手助けとなります。

 当然、他の人にアレンジを依頼する時にも、音域、または、キー、は条件として提示する必要があります。

 キーの選択ミスは、歌わずして失敗することが約束されてしまったようなものです。十分検討するように心がけましょう。

2.譜面

 譜面は、基本的に、自分用のキーに変えて(すなわち、自分の音域に合うように移調して)自分で書きましょう。伴奏者にその場で移調を指示するのは厳禁です。その場での移調指示は、伴奏者に負担を強いることになり、結果的に良くない出来となる可能性が強いです。全キーOK、などという人はまずいません。

 キーはジャズ奏者の特徴として、フラット系が伴奏しやすい、という慣例があります。できれば、 F,Bb,Eb,Ab,C,G くらいまで、多くても D,Db くらいまでとして、自分の声の音域に合うキーを選択するようにしましょう。ただし、転調を伴う曲では、その転調先のキーも考慮してキーを検討しなければなりません。ただし、All The Things You Are や Song Is You のように、どのキーを選んでも転調で難しいキーになる曲も多数存在します。

 キーの決定が難しければ、自分の音域を提示して楽器奏者に事前に相談した上で譜面を書いておくことが望ましいです。初心者は自分の譜面を書く時に楽器奏者に助言をもらいましょう。伴奏者にとって難しいキーの場合、伴奏者が適切に伴奏できない可能性があり、結果的に歌い手をも巻き込んで全体が良くない出来となる可能性が強いです。例えば、E が最適なキーであったとしても、音域に応じ、F または Eb にすることを勧めます。(同様に、B は Bb または C、F#/Gb は F または G、A は Bb または Ab 。)

 譜面にはコードだけでなく、音符(おたまじゃくし=メロディ)も必ず書きましょう。ただし、練習中の曲で、適切なキーを決めるために試行錯誤している間は、コードのみの譜面の方が臨機応変に対応できるということもあります。この場合でも、キーが決まったら必ずメロディーを書くようにしましょう。

 歌詞も書いておくようにしましょう。特にバースの部分の歌詞は必要です。伴奏者にとって初めてのバースの場合、歌詞が書かれていることは大いに助けになります。歌詞を書いてないと、伴奏者が適切に伴奏できない可能性があり、結果的に出来が悪くなる可能性があります。

 バース部分は、
 ・コーラス部分とキーが異なる
 ・頻繁に部分転調する
 ・コード進行が通常のルール( I-IV や循環など)から外れる
ものが多いです。したがって、バース部分に間違ったコードが記述されていると、バースをうまく歌えない可能性が高くなるばかりか、正しくコーラス部分に入れない可能性もあります。特にバースの頭のコード、あるいはその1小節前(バースへの導入部分)のコード、バースの最終小節(コーラスへの導入部分)のコードは、確実に正しく書きましょう。また、記述されているコードで、バースの入り口もコーラスの入り口も、正しく音程が取れることを事前確認しておきましょう。(バース部分のコードを暗記している伴奏者はまずいません。)

 譜面(特にコード)は信頼できる人にチェックしてもらいましょう。できれば、ピアニスト、または、ギタリスト、あるいはべーシストが良いと思われます。市販の譜面の多くは、間違いがある、あるいは通常演奏されているコードとは異なることのほうが多いです。間違ったコードで伴奏されると自分が歌えなくなり、伴奏者からも指摘され、譜面準備の手抜きは結局自分に返って来ることとなります。

 決まった形のエンディングにしたいのであれば、エンディングも譜面に書いておくことが必要です。
 ・繰り返しの場合はその範囲
 ・曲の終わりとは異なるコードの場合はその記述
 ・譜割りを倍にする(コードの長さが倍になる)場合もその記述
等々あります。

 譜面は伴奏者が分かり易いように書きましょう。特に繰り返しのある場合の1、2や、エンディングへ移る場所など。伴奏者が場所を間違えると、歌い手にとっても致命的な痛手になります。

3.伴奏者への事前説明

 テンポは必ず歌い手が提示しましょう。気にいらないテンポで始まってしまった場合、やり直すぐらいの勇気を持ったほうがいいです。適切でないテンポで歌全体が台無しになるよりは、やり直した方がまし、ということです。

 テンポ提示のためのカウントは伴奏者に誤解が生じないように行いましょう。フィンガー・スナップだけの提示や、不適切なワン・ツー・...での提示は、ウラ・オモテの勘違いや、倍テン・半テンの誤解を招く可能性があります。最低限4分音符の単位が正しく伝わり、ウラ・オモテの誤解が無いようカウントしましょう。必要に応じ、出だしのメロディを口ずさんで、伴奏者に正しく伝えましょう。

 リズム(Bossa Nova か 4ビートか、など)も必ず歌い手が指定しましょう。

 歌の構成上、特定の場所でイン・ツーから4ビートに移る個所の指定があるのなら、その旨説明しましょう。その他の仕掛けについても同様です。また、特定のところまでピアノまたはギターだけで伴奏してもらい、そこからベースやドラムが入る場合なども同様です。

 バースを歌うのであれば、必ずその旨伴奏者全員に伝えましょう。ピアノ(あるいはギター)以外はコーラスに入るまで待っていることになり、そのためにもバースの譜面にはメロディ及び歌詞が必要です。それでも伴奏者に不安を感じる場合、バースの終わり頃にコーラスに入る個所をジェスチャーで伴奏者に示すと伴奏者は入りやすくなります。

 1拍の長さが譜面上の記述と違う形で歌う場合(例えば、Lover Come Back To Me のように通常の譜面記述の倍の長さで歌う場合)、分かり切ったこととは思っても、事前に明確に伴奏者に伝えましょう。この手の曲は他に Song Is You や That's All などがあります。歌い手によっては譜面通りに歌うこともあり、伴奏者に混乱が生じます。

 仕掛けがある場合、あるいは、構成が難しい場合、必ず説明しましょう。譜面と違う構成を指示するのは絶対にやってはなりません(言い換えれば、歌いたい構成の譜面を用意すること)。

 エンディングを自分の考える形にしたいのであれば、必ず説明しましょう。(譜面に書いてあることが望ましい。)

4.練習時あるいはセッション参加の心構え

 譜面は最低3コピー用意しましょう(ピアノ、ベース、ドラムまたはメロディ楽器用)。場合によってはギター用に追加、あるいは、仕掛けのある場合、ドラム用は必要です。

 譜面を持参しなくてもセッションに参加できるよう、キーを指定するだけで伴奏者が伴奏可能なような一般的に有名な曲を何曲か自分のレパートリーに加えておきましょう。
 ・All Of Me
 ・Fly Me To The Moon
 ・Satin Doll
 ・Summertime
 ・Bye Bye Blackbird
 ・On The Sunny Side Of The Street
 ・Misty
などです。これも易しいキーであることが必要です。その他に F または Bb (あるいは C)の Blues も持っておいたほうがいいでしょう。

 必ず自分自身のエンディングのイメージを持っておきましょう。必要に応じ、事前に伴奏者に伝えましょう。または、エンディング近くに身振り手振りで伴奏者にわかり易く示しましょう。『ここから先は伴奏者側の責任だよ』、と歌い手が明確に伴奏者に提示するまでは歌い手側の責任だと自覚しましょう。エンディングの失敗は口惜しい想いをすることになります。終わりの失敗で全てを台無しにすることのないようにしましょう。終わり部分の繰り返し、逆循の何回かの繰り返し、などのいくつかのエンディングのパターンをマスターしておきましょう。

 不特定の伴奏者が参加するセッションでは、超アップ・テンポ(や超スロー・テンポ)は避け、中庸のテンポの曲を選んだ方が無難でしょう。ましてや初見で超アップ・テンポの曲の場合、余程の伴奏者でない限り、エンディングまで全体を上手に伴奏することは難しいです。

 伴奏者に必ずソロを回しましょう。歌に戻る場所は、ワン・コーラスのソロ後、サビ後、などです。また、伴奏者全員にソロをとらせる、あるいはドラムとの4バース用のレパートリーなども用意しておいたほうがいいでしょう。このためには、ちゃんと小節を勘定できる(奏者がどこを演奏しているかわかる)能力を必要とします。

 ※バースに関する注意

 ヴォーカル・セッションなどの専門の伴奏者がいる場合はバースにも慣れた伴奏者と想定されバースを歌うことにも問題は無いかもしれませんが、伴奏者が不特定のセッションの場合はバースを歌うのは避けた方がいいでしょう。余程の伴奏者でない限りバースを上手にバッキングはできません。ましてや初顔合わせで初見ではまず失敗と考えた方がいいでしょう。誰でも知っているバース(Stardust や I Left My Heart In San Francisco など)なら別ですが、これらすらも楽器演奏オンリーの人には馴染みが薄いと認識しましょう。

 バースを歌い始める時のリーダーシップを歌い手がとるか伴奏者がとるか、は難しい問題です。任せられる力量の伴奏者であればそれでもいいです。伴奏者がバースを知らないか慣れていない場合、歌い手が伴奏者に指示しましょう。伴奏者に指示できないようなレベルの曲であれば、そのバースを人前で歌うのはやめましょう。セッションで時々、バースの出だしで歌い手も伴奏者も固まってしまって出られない光景を目にすることがあります。バースの出だし(バースのイントロ)の演奏は、伴奏者にとっては、コーラスのみの曲のイントロよりはるかに難しい、ということを認識しておきましょう。

 ベースとのデュオで歌う、あるいはベースにイントロを依頼する場合も考慮が必要です。楽器セッション中心のベース奏者の場合はこれらに柔軟には対処できない可能性があります。ベース奏者がどの程度歌伴に慣れているかを判断した上で依頼するようにしましょう。

 アレンジの一種に、何コーラス目かで、あるいはコーラス毎に、キーが変わる(多くの場合、半音上がる。 Mack The Knife = Moritat などで良くある例)アレンジがあるが、実は伴奏者には大きな負担となっています。アレンジとして譜面が書かれていても、コーラスに従ってキーを変えることは伴奏者にとって易しいことではありません。ましてや譜面無しでコーラス毎のキー変更を指示するのはやめましょう。また、初めての顔合わせでこれを実施しても、まず失敗すると認識しましょう。

 セッション参加時は、他の歌い手から学ぶのは勿論、伴奏者からも学ぶようにしましょう。伴奏者にとってはセッションは真剣勝負の場であることを認識しましょう。伴奏者が歌い手からどのようなタイミングで何を受けて伴奏しているか、そのためには、歌い手としてセッションの場で伴奏者に何をどう伝えるべきか、を学ぶようにしましょう。特に、イントロで伴奏者が歌い手に伝えようとしていること、エンディングで伴奏者が歌い手から受けようとしていること、を知るようにしましょう。これにより、イントロ、エンディングの「定石」というものが理解できてきます。

 伴奏者にどんな形にせよ(キーであれ、テンポであれ、リズムであれ、アレンジ・仕掛けであれ)過度の負担を強いることは、結果的に歌自体をも含めた全体の出来に影響します。本来リハーサルが必要であるようなものを初顔合わせでや初見では絶対にやってはいけません。聴いてカッコいい、ということは、演奏する方にとっては実は非常に難しいことです。また、伴奏者の力量を推し量る、ということも歌い手の重要な能力です。

5.スキャット

 スキャットは基本的に声によるアドリブです。したがって、楽器奏者による通常のアドリブ・ソロと同様のルールが適用されます。

 発声(音)そのものは意味の無い発声(音)をアドリブ・ソロに乗せることになりますが、発声にも過去の例から自ずと定まってきたルールのようなものがあり、ただ『でたらめ』に奇声を発すれば良いというものではありません。この辺はCDなどで学んでもらうしかありません。

 スキャットをそこそこのレベルで行うためには、楽器奏者が身につけるような、アドリブを行うための音楽的な基礎知識を身に付ける必要があります。最低限、曲の構造・コード進行を知っていなければ、スキャットは本当の『でたらめ』になり兼ねません。そのためには、楽器奏者と同様の訓練が必要となりますが、その部分については本文の目的とするところでは無いので、これ以上深くは触れません。世の中の各種出版物等を参考にしましょう。

 スキャットにも、本当のアドリブ(歌い手本人の意志によって毎回異なるアドリブ)と、アレンジの一部として組み込まれている(前もって書かれている)毎回同じ、あるいは似たメロディをスキャット発声に乗せるもの、など何種類かの形態がある。アレンジの一部として組み込まれるものは、器楽演奏でいうセカンド・リフのような取り扱いになります。

 歌い手が絶対音感を持っていれば器楽奏者と同じような基準でアドリブ・ソロを取れるでしょうが、絶対音感を持たないであろう多くの人の場合、多くの部分転調を伴うような複雑な曲でのスキャットによるアドリブ・ソロは勧められません。転調の音程差を、楽器の力を借りずに、声で適切に対応することは困難です。各小節の最初のコードをバックが演奏するのを聴いた後、音程を測って声を出す、というやり方はありますが、これでも耳の良さとかなりの訓練が必要です。スキャットを始める場合、ブルースのような構造を熟知した曲や、ダイアトニック・コードだけの曲(転調を伴わない曲)、あるいは、せいぜい関係調への転調程度の簡単な構造・音を捕え易いコード進行の曲から手がけることを勧めます。レコードで聴いたスキャットが恰好良いからと言って、いきなり難しい曲から始めても、それが普遍的に身に付くことはまずありません。そういう意味ではブルースは構造的には簡単ですが、ブルースで聴かせる程のスキャットアドリブをするのは実は大変なことである、と悟るまでには、多くのの練習や経験が必要でしょう。

 スキャットの問題の一つに、自分の声の音域が自分の歌いたいフレーズをカバーできない、ということがあります。楽器の場合は音域はほぼ確定しており、奏者もその範囲内でフレーズを組み立てる訓練ができていますが、スキャットの場合、時としてはずみなどから自分の音域を越えるフレーズに踏み込んでしまうことがあります。たとえば、F のヴルースで自分が歌える慣れたフレーズを Bb のブルースでも歌えるとは限りません(楽器の場合は自ずと運指が異なるので違う曲としての認識があります)。したがって、普段から自分が歌うキーでスキャットの練習をしておかないと、自分の音域にフレーズを収める、という訓練が楽器奏者のようには行き届かず、歌いきれないフレーズに踏み込むことになり兼ねません。楽器奏者の場合、運指を考慮に入れてフレーズを考えるので、可能なフレーズか否かは自ずとわかるものですが、スキャットの場合、頭の中でフレーズを(相対的に)考えることになるので、その音が物理的に発声可能かどうかまでなかなか配慮が回らない、ということです。

 スキャットができることによって、楽器奏者とのセッションにおいて4バースができる、など歌い手自身の幅も広がり、また、この訓練の期間中に音楽の基礎知識が増す、などの結果、歌自体も柔軟な対応が可能になる、という副次効果もあります。この訓練中に、イントロやエンディングに対応する能力も大いに増すことになるでしょう。

 自分自身で譜面を書けないようなレベルの人、あるいは、自分用に移調して異なるキーの譜面を正しいメロディやコードで書けないレベルの人はスキャットは避けましょう。よほど耳の良い人で、バックを聴けばコード進行に従って音をとれる人なら別ですが、これでも、伴奏者に正しいコードの譜面を渡していることが前提となります。

 スキャットは、歌い手を特徴づける強力な武器とは成り得ますが、それでも本来の歌あってのものです。やはりスキャットは、歌い手の出し物としては二次的に考えるべきもので、まずは歌詞を持った『歌』を聴き手に届けることを第一の責務と考えるべきです。

6.英語

 英語はそれなりの勉強をしましょう。何を歌っているのか分からないような発音は興醒めです。歌はまず内容を伝えるべきです。スキャットがいくら上手でも『歌』が伝わらない人は半人前です。英語については、日本人のプロの歌手でもレベルがかなり低いです。本物を聴いて勉強しましょう。ただし、そのお手本についても、歌詞や発音を大事に丁寧にするタイプとそうではない(決してそれらをないがしろにしているという意味では無い)タイプがいるので注意しましょう。例えば、Anita O'Day を聴いて発音を学ぼうとしても、初心者には無駄と思われます。私個人的には Kapp/Decca 時代の Carmen McRae を勧めます。この時代の McRae を聴くと、自分の英語力(聴取力)が上がったと勘違いすることは間違い無いと思われます。

 話し言葉の英語と歌の英語は必ずしも同じではありません。この辺は英語圏の歌手のレコードを聞き込むか、専門家(信頼できるプロの歌い手あるいはトレーナー)に習う、あるいは聞くなどして、歌としての英語の発音を勉強しましょう。

7.楽器演奏

 何らかの楽器を演奏できるのであれば、あるいは練習する機会があるのであれば、その機会は生かすようにしましょう。特にピアノなどのコード楽器であればなおさらいいです。コードの正しさを認識できる能力、小節を勘定できる能力、演奏個所を識別できる能力、などがより確実に身に付きます。

 また、聴くことについては、歌ばかりでなく、楽器演奏のCDも積極的に聴くようにしましょう。ジャズという時点では歌も演奏も共通です。逆に、歌だけを聴く、ということの弊害のほうが大きいです。

8.トレーニングやスクール

 歌の場合、楽器以上に自己流による弊害は大きいと考えられます。自己流だけで突き進むと取り返しのつかない事態に陥らないとも限りません。信頼できる人のアドバイスを得て、良い先生につくのがベストです。

 上記、また英語も含め、何らかのトレーニングを受けることを勧めます。もし、何らかの理由(金銭的、時間的、等々)でトレーニングを受けることができない場合、トレーニングを受けている人の話を聞いたり、あるいはその人のライブを聴く機会を持つようにしましょう。

 しかし、習うと言っても、初心者にとっては何をどのようにどんな順序で習うべきかの判断も難しいでしょう。
 ・まず音楽的な基礎知識(音楽理論等)を身に付けるべきか?
 ・とりあえず何かの曲を歌えるようになるべきか?
 ・発声など歌うための基本を身に付けるべきか?
 ・歌の前に何かの楽器を多少でも弾けるようにすべきか?
等々、考え方はいろいろあるでしょうが、その個人によって適切に決定するようにしましょう。この方向を決めるためにも、自分の現状を知っている信頼できる人のアドバイスを受けるようにしましょう。

 私の個人的な意見としては、
 ・まず何曲かを、誰かの指導で、あるいは聞き覚えで歌える
ようになった後、
 ・練習またはセッションの経験
を経て、あるいはそれらと並行して、
 ・音楽理論を学ぶ、
 ・あるいは歌うための基本(発声等)を磨く
ことが必要ではないかと思います。歌というものが何か、あるいは歌うということがどんなことかを多少理解してから、その基本に立ち返っても回り道では無いと思います。

 これらの基本を身に付けるための一つの手段として、当面は自分の譜面は自分で書くことを勧めます。もちろん楽器奏者から指導してもらうことは大いに結構です。譜面を書く過程で、原メロディを覚え、曲やコードの成り立ちなどの音楽的な知識が自ずと身につくことになります。

 曲は必ず原メロディを知り、原メロディを歌えるようになった上で、自分自身の解釈を付け加えることです。原メロディも知らずにCDを聞いただけで、いきなり個性的な独自の歌い方をしても、それが本人の普遍的な個性として身に付く可能性は少ないです。このためにも、譜面はコードだけでなく必ず音符(メロディ)も書きましょう。

 ヴォーカル・スクールは、スクールによっては先生の個性が強く出され、先生の方針に従うことを強制されることもあるようです。スクールを選ぶ場合、自分が信頼できる歌い手の意見を聞いて選ぶようにしましょう。選択を誤れば自分の力を伸ばせない可能性があるばかりか、高い授業料が無駄になってしまいます。また、上手な歌手が必ずしも良い先生とは限りません。スポーツの世界で、名選手必ずしも名監督とはならず、のようなものです。

 歌は結果的に肉体的特徴が反映されるものであり、習うのであれば同性の先生を選ぶようにしましょう。歌い手にとって呼吸法(腹式呼吸)は重要な要素であり、同性であってこそ適切な指導ができるものです。また、歌そのものを習うよりも、ヴォイス・トレーニングを受けるのも1つの方法です。前述のように、何がしかの経験を経て、多少とも歌というものが分かってからでないと、どっちつかずの半端になる可能性もあります。この辺は、信頼できる人に、自分自身の現状を理解してもらった上で、アドバイスを受けるようにしましょう。

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