1−3. Charlie Parker の音楽に関する書物 / Transcription

(Last Updated 1998/06/13)


【1】書物

 前述のように、Parker の音楽に関して記述した書物は意外に少ない。伝記やエピソードの類を記述した本、あるいは Transcription は割りとあるのだが。Parker の演奏や方法論について記述しても、それは既に解明されている Jazz の各種理論の再説明にしかならないからであろう。細かい分析をすれば新たな発見は無数にあろうが、それらとておそらく既存の音楽理論で体系的に説明でき、新たな音楽理論を確立しなければ説明できないような新発見などあろうはずもない。もっとも世の中にはハーモロディックなる珍妙な理論(?)を作り出して、自身のデタラメを正当化しようとしている Ornette Coleman のような人間もいるから、今後 Parker についてどのような理論が出てくるかについては、筆者の推測の範囲外である。

 ということで、改めて現在の時点で Parker の音楽について純粋に音楽的アプローチで説明しようとする人の少ないことは納得できる。

 以下に筆者が目を通した著作物を紹介する。


(1) チャーリー・パーカーの音楽 (市岡 仁 著、 自費出版)
 この著者は筆者以上に Parker 命の人のようで、Parker に対する思い入れは相当なものである。Parker の演奏に関して色々なアプローチでの分析を試みており、これが商業的出版の対象とはならずに自費出版せざるを得なかった事情もわかる。ただ後半は、勢い余って、Parker がどんなに難しいキーや転調をも楽々こなしたか、という論点が強調され、楽曲(それも Verve 録音が多い)の調や転調の解説に多くのページが費やされる形になり、Parker の音楽解説という焦点がぼやけて来ているのも事実である。しかし、これほど真摯に Parker の音楽について情熱をもって語った本も珍しい。

 また、この本の最後では多くの Transcription 本にも触れており、どの本がどれほど正確かデタラメかということについても詳細な分析結果を記述している。やはり Omnibook が最も正確なようである。これから Transcription 本を入手しようとする方はこの部分を参考にされたい。ちなみに筆者は Omnibook の全60曲を MD に収め、 Omnibook の演奏版を作成し、当 Homepage の Owner である鈴木智晴氏に進呈した。この MD 作成中につくづく感じたのは、やはり Parker の音楽を譜面で表わすことの限界である。Omnibook の編者は、非常な努力を持って Parker の演奏を伝えようとして、さまざまなコメントを付記しているが、実際の演奏の前には記述不可能部分の大きさが実感できる。Omnibook を購入しようという方には是非とも元の演奏を聞きながら譜面を見ることをお勧めする。このために Omnibook MD は大いに役立つはずである。

【2】レコード解説等

(1) Charlie Parker on Savoy : Complete Studio Recordings (3 CD Set) (K30Y 6131-3, King, Japan)
 CD の解説として『チャーリー・パーカーの音楽』という題で James Patrick の論文が掲載されている。Savoy の録音を各セッション毎に解説し、その説明の中で音楽的な分析を試みている。一部 Transcription を使用して Parker の音楽的発展や作曲の背景についての解説をしている。

【3】Transcriptions

 各種の Transcription 及びその内容の評価については、前述の本『チャーリー・パーカーの音楽』(市岡仁著、自費出版)を参照されたい。

(1) Charlie Parker Omnibook

前述の本の中で最も高く評価されている Transcription である。筆者の評価については前述の文章を参照されたい。

(2) Charlie Parker Montreal 1953 (CD Uptown UPCD 27.36, Canada)

CD の解説の一部として、 CD 中の1曲を除く全8曲の Transcription が載っている。

(3) The Complete Dean Benedetti Recordings of Charlie Parker (CD Mosaic, USA)

CD の解説の一部として、Benedetti や Jimmy Knepper による Transcription を載せている。その一部は現在では失われてしまった Benedetti 録音からのもの。(この事実からしても Benedetti の録音が他にもあることが推定される。)

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