Up with Donald Byrd (Verve)
Donald Byrd


1.You're Talkin' About My Baby
2.Blind Man, Blind Man
3.Boom Boom
4.My Babe
5.See See Rider
6.House of the Rising Sun
7.Bossa
8.Cantaloupe Woman
9.Sometimes I Feel Like a Motherless Child
Donald Byrd(tp)
Jimmy Heath(ts)
Stanley Turrentine(ts)
Kenny Burrell(g)
Herbie Hancock(p)
Ron Carter(b)
Bob Cranshaw(b)
Grady Tate(ds)

1964/11/4 Recording



〜 最高のジャズロック、サイドマンで輝くハンコック 〜

 私の聴いた限りで、Jazz Rock(Fusion でも Cross Over でもない)で最もカッコ良いアルバムは、Byrd のこれと、Stanley Turrentine の Rougu 'n' Tumble (Blue Note) である。これは、コーラス入りのアルバムであり、この時期 Byrd は Blue Note のアルバムでこの種の試みを盛んにしたようであるが、このアルバム以外は良く聴いていないので、そっちの方はコメントのしようが無い。

 このアルバムの最大の貢献者は Herbie Hancock である。どの曲を聴いても素晴らしく、わくわくしてしまう。1曲づつはコメントしないが、そのリズム・パターン、コードの音の積み重ね、タイミング、何もかもが素晴らしい。Hancock はサイドマンとしてこの手の Jazz Rock アルバムに参加した時が正に本領発揮というか本性を出すというか、これほど手のつけられない存在は無いのではないだろうか。勿論、そんじょそこらの安手の Jazz Rock ピアニストとは一線も百線も画す演奏である。リーダーの Byrd 自身は平凡、強いて誉めれば、シンプルさの美。

 では、以下に全9各曲の寸評を。

 Blind Man, Blind Man: Hancock の Blue Note 盤でお馴染みの1コードの曲の女声コーラス入り版である。このアルバム中ではまあ平凡。アドリブのバックでの(おそらくはコーラス隊による)合いの手が愛嬌。Boom, Boom: 5−4で終わる女声コーラスによる Blues。Burrell のソロがこの手のセッションにピッタリ。女声コーラスもカッコいいことこの上ない。House Of The Rising Sun: Hancock のリフが抜群。Byrd は退屈。女声コーラスはバックでの効果音的なオープン・ハミング。See See Rider (C C Rider): 女声コーラスがめちゃくちゃカッコいい。こんなカッコいいのはめったに聴けない。Burrell のソロも抜群。Cantaloupe Island: Hancock のお馴染みの曲のハミング・コーラス入り。何とギロつきですぞ。Turrentine も Grant Green もちょっと勝手が違う様子。Bossa: カッコいい5−4の Blues。Turrentine やっと本領発揮。Hancock はバッキングもソロもカッコいい。Green は今一。Sometimes I Feel Like A Motherless Child: 素晴らしいコードがついている。このコードなら、メロディをきれいに吹くだけの tp にバックをつけるだけでも満足しそう。普段は聞かれないきれいなサビがついている。混声コーラスも美しい。You've Been Talkin' 'bout Me, Baby: トニックとドミナントだけの2コードだが魅力的なコーラス付き。中に Byrd によると思われる誠にエロティックなハミング付き。My Babe: 3コードの変形の曲でコーラス付き。歌詞が意味深なのではないかと思われるが良くわからず。アドリブのバックの合いの手がカッコ良い。


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