Standard Time Vol.5 : The Midnight Blues (Sony)
Wynton Marsalis


1.The Party's Over
2.You're Blase
3.After You've Gone
4.Glad to Be Unhappy
5.It Never Entered My Mind
6.Baby Won't You Please Come Home
7.Guess I'll Hang My Tears Out to Dry
8.I Got Lost in Her Arms
9.Ballard of the Sad Young Men
10.Spring Will Be a Little Late This Year
11.My Man's Gone Now
12.The Midnight Blues
Wynton Marsalis(tp)
Eric Reed(p)
Reginald Veal(b)
Lewis Nash(ds)
 with Strings

1998/4/28 Inprint



〜 ウィントン・マルサリスの素晴らしいバラード集 〜

 Wynton のスタンダード5作目で、Quartet がストリングスと共に吹き込んだ CD。大スタンダード及び渋めの曲、計11曲に自身のオリジナル The Midnight Blues 1曲を含めたもの。このオリジナルも他の曲にフィットしている。

 多分、例のマウス・ピース一体型のトランペットと思うが、素晴らしい音で、本当に美しく曲を吹いている。高音や速いパッセージでも音がかすれたり乱れたりせず、どうやったらこんな場面でこんなきれいな音が出るのだろうと不思議に思えるほどきれいに演奏している。全曲バラードだが、いかにも、という感じがしないのは、リズム・セクションが淡々と弾いているのと、Wynton のスムーズさの故か?勿論、音楽的にも技術的にも(多分)非常に高度なことをやっているのだろうが、それを聞き手に感じさせないほどスムーズに演奏している。多分 tp をやる方ならあらゆる所で、ほう〜、と感心することが有るのだろう。逆にスムーズ過ぎて、本来ならユーモラスなフレーズも端正に聞こえてしまうのは難点か。例えば、結構ハーフ・バルブを使っているのだが、これがリー・モーガンのように茶目っ気たっぷりには聞こえず、きれいに流れるフレーズの一部のように聞こえてしまう。(これは、実はとてつもない技術が必要なのでは?) 私個人的には、この部分に関しては、リー・モーガンの不良っぽい演奏の方が好きですが。

 ストリングスは出過ぎず、ある場面では弦を意識させないほど溶け込んでいる。ということで、以前のフル・バンやディキシーのような演奏とは全く異なり、また、初期のコンボの非常にテクニカルな最先端の演奏とも異なる、また、スタンダードVol.1, 2, 3 (4は聴いていません)とも趣きを異にする Vol.5 です。この CD から1曲、Glad To Be Unhappy を Verse MD に収録。


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