
Sonny Stitt Plays (Roost)
Sonny Stitt

1.There'll Never Be Another You
2.The Nearness Of You
3.Biscuit Mix
4.Yesterdays
5.Afterwards
6.If I Should Lose You
7.Blues For Bobby
8.My Melancholy Baby |
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Sonny Stitt(ts)
Hank Jones(p)
Freddie Greene(g)
Wendell Marshall(b)
Shadow Wilson(ds)
1956/9/1 Recording
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〜 一番好きなアルバム 〜
世の中で一番好きなアルバムは、と聞かれたら何を挙げるだろうか?
一番好きなプレイヤーは、と聞かれれば即座に
Parker と答えるが。好きなアルバムは多すぎて自分でも困るが、折りに触れて聴く、いつ聴いても快感、何度聴いても飽きない、プログラムの素晴らしさ、共演者の素晴らしさ、勿論リーダーの素晴らしさなどで、私に取っての一番はこの
Roost レーベルの Sonny Stitt Plays ではないだろうか?
Roost の Stitt というと、日本では、このアルバムの兄弟アルバムのWith
New Yorkers や Pen of Quincy ばかりがもてはやされているが、どっこい、Stitt
自身のできではこの Plays が一番ではなかろうか?Hank
Jones という相性の良いバック(New Yorkers
も Hank であるが)を得て、1ホーンで、しかもアルトのみを吹きまくっている。
プログラムも、歌物あり、循環あり、Blues
あり、それもアップ・テンポからバラードまで、キーもマイナー/メジャーあり、で、全く飽きさせない。ほとんどアレンジ無しかヘッド・アレンジ程度で、時々打ち合わせ不足によると思われる乱れもあるが、気にならない。56年という時期は、Parker
も亡くなって、Stitt としては安心して(?)アルトを吹ける時期だったのだろうか?ホントに屈託のない、溌剌とした演奏である。
この中で1曲を挙げろ、といえば、If I Should
Lose You か Another You だろうか? Stitt
の歌物/バラードは大好きである。この2曲はバラードと言うより、ミディアム・スローとミディアムであるが、楽々と倍テンでこなしている。Stitt
は時々倍テンの一本調子と言われるが、どうしてどうして、無駄なフレーズは一つもない。全てが考えられたフレーズである。楽器を吹き切るという観点では、Stitt
は Parker 以上ではなかろうか? 話はこのアルバムからはそれるが、Stitt
は Parker 以上に Any Key OK なのではなかろうか?
途中転調でどんな難しいキーに入っても、それを一切感じさせずに、すべてのフレーズを吹き切ってしまう
(With New Yorkers の Cherokee など)。こんな人も希有である。
Yesterdays も My Melancholy Baby も Nearness
Of You も、歌物の演奏はかくあるべき、という演奏である。他には、アップ・テンポとスローの
Blues が1曲づつと循環である。これらがまた、堪らない。どんなアップ・テンポでも泣きの有るフレーズが出るのがたまらい。Parker
のようなミステリアスな部分はほとんど無く、明快そのものである。見方を変えれば、欠点でもあるのであろうが。
Stitt に加えて素晴らしいのが Hank Jones
である。正に玉をころがすような、一切の無駄の無いきれいなフレーズの連続である。循環など、途中で裏コードから入るフレーズも交えて、誠にスムーズに弾いている。この頃の
Hank は本当に好きだ(いつの Hank でも好きであるが)。Peterson
が唯一頭が上がらない、という理由もわかる。
このアルバムには思い入れもある。学生の頃、オリジナル盤を銀座ヤマハで入手した。サラリーマンの初任給が3万円台くらいの時代に、2,500円はしたろうか?
Roost 特有の分厚いボール紙のジャケットの中から、あの外盤特有の匂いと共に、ブルーのオリジナル・ロゴの盤が出てきた時は思わず笑みが出てしまった。盤質は、その当時の外盤一般にもれず、質の良くないものであったが、その盤を何度聴いたことか。ほぼ全曲のアドリブまで憶えるまでになってしまった。
60年代初頭は、こうしたオリジナル盤がリアル・タイムで入手できた。今から思えば、飲み代/生活費を節約しても、もっと沢山買っておけば良かった。でも、確かに当時、レコードは高価な贅沢品であった。
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