Payton's Place (Verve)
Nicholas Payton


1. Zigaboogaloo
2. The Three Trumpeteers
3. Back To The Source
4. A Touch Of Silver
5. Concentric Circles
6. Li'l Duke's Strut
7. Time Traveling
8. With A Song In My Heart
9. Paraphernalia
10. Brownie A La Mode
11. People Make The World Go Round
12. The Last Goodbye
Nicholas Payton(tp)
Tim Warfield(ts)
Anthony Wonsey(p)
Reuben Rogers(b)
Adonis Rose(ds)
Roy Hargrove(tp)
Wynton Marsaris(tp)
Joshua Redman(ts)

1997/9/29-30
1998/1/6 Recording


〜 若手の筆頭ニコラス・ペイトン 〜

 Nicholas Payton の今の時代の tp 第一人者の面目躍如たる演奏である。まず、Lee Morgan が書きそうなカッコいい Jazz Rock で始まる。Lee Morgan 的フレーズと共に最盛期の Freddie Hubbard のような切れの良いフレーズが続く。そんじょそこらの Fusion のような生っちょろい演奏では無く、わくわくする。

 続いて、Wynton Marsalis, Roy Hargrove との3人による循環(サビ変型コード)。大バトルを期待したが、3人とも行儀の良い演奏で、それぞれ1コーラスのソロの後のチェースも端正なものでちょっと肩透かし、ただ内容は良い。

 徐々に60年代ブルーノートの新主流派的演奏になり、Nicholas Payton も益々熱くなってくる。決してあの時代のなぞり直しではなく、80年代90年代を越えた現代の演奏になっている。わくわくする新主流派的演奏が続く中で、その頂点とも言うべき Shorter の Paraphernalia に入る。あの確か Miles In The Sky の中の曲である。この曲の他人の演奏を聴くのは初めてだが、ゾクゾクする。60年代にリアル・タイムでこれらの演奏を聴いていた時の興奮が甦る。

 途中、3連シャッフル的なカッコ良い曲や、With A Song In My Heart での Roy Hargrove との火の出るようなバトル(これはすごい)、Brownie の Riff の断片を寄せ集めた曲での Wynton とのバトルなども交え、最後を Joe Henderson のBlack Narcissus に似た曲(アレンジもちょっと似ている) で締めくくっている。これらのオリジナル曲も皆魅力的な曲である。作曲家としての才能も大変なものを持っている。

 サイドメンも皆素晴らしいが、中では Anthony Wonsey (p) が Hancock 的スリルを感じさせて素晴らしい。

 比較のために〜的あるいは〜似という表現を使ったが、決して悪い意味ではなく、その素晴らしさの表現のために用いた。tp の演奏技術という面でも、音色面でも本当に素晴らしい。この面ではここにそろった3人の tp 奏者が現代の最高峰であることに異論を挟む方は少ないであろう。

 Nicholas Payton という人は、こういう最先端の演奏をする反面、Dixie/Swing の演奏をすれば、いわゆるモダン・ジャズのフレーズ/手癖は全く出さずに Dixie/Swing 時代の奏者になりきれる希有の人である。その面についてはまた別に触れたい。


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