Sings Songs of Victor Young and Frank Loesser (DIW)
Joni James


1.My Foolish Heart
2.I Don't Stand A Ghost Of A Chance With You
3.Stella By Starlight
4.A Hundred Years From Today
5.Song Of Surrender
6.Everything I Do
7.If I Wewe A Bell
8.My Darling, My Darling
9.On A Slow Boat To China
10.I'll Know
11.Spring Will Be A Little Late This Year
12.Anywhere I Wander
1960 Inprint?



〜 ジョニ・ジェイムスとは 〜

 長年廃盤のままだった Joni James のアルバムを、数年前 Disc Union がJoni James と個人契約を結んで、大量に復刻した CD の内の1枚である。Joni は、自分の全てのアルバムをレコード会社から引き取り、自分の管理としたために、長い間レコード会社は Joni のアルバムを出せなかった。

 Joni は50年代のいわゆるアイドル的存在で、清純派の見本のような歌い方をする。声は非常に澄んだ清楚な声で、言葉はクリアできれいな発音である。メロディは一切崩さず、原曲に忠実に歌い、Scat/Ad-lib などもってのほか、フェイクさえしない。

 レパートリーはいわゆるスタンダードから大甘のポップス/ノベルティ・ソング、ハワイアンからウエスタンまで幅広く、バックは多くの場合ストリング入りの大きな編成で、50年代後半以降は当時のヒット・ポップス風のバック/アレンジも聴かれる。古き良き時代のアメリカン・ポップスの一つの典型のような存在である。

 で、このアルバムであるが、2人の大作曲家の曲を6曲づつ歌っている。Victor Young の曲には、My Foolish Heart, Stella, Ghost of a Chance などが含まれ、Frank Loesser の曲には、Slow Boat, If I Were a Bell, Spring Will Be a Little Late This Year などが含まれていて、ジャズ・ファンをも満足させる曲が含まれている。

 バックはストリング入りのオーケストラを中心に、曲によってかなりバラエティのある贅沢な編成である。アレンジはこの種のスタンダードの典型のように、バッチリ書かれたもので、バックの奏者のアドリブによるオブリガートの類もほとんど無く、ジャズ的雰囲気は薄い。もう一つ、コード進行はほぼ全曲がいわゆるモダン・ジャズのインストのコードとは異なり、より原曲に近い(あるものは更に簡略化された)コードになっている。モダン・ジャズのコードに慣れた方には違和感もあろう。

 Joni は清楚にきれいに、安定した歌唱を聴かせる。音程はピタリで、ビブラートも古さは一切感じさせない(30年代のバンド・シンガーに感じるような古色蒼然たる印象は一切無い)。高音部はファルセットも使っているが、違和感は無い。

 上述のようなインストで良く演奏される曲などを聴くと、あまりのメロディのストレートさに戸惑いを憶える方もいよう。しかし、ストレートに歌っただけで聴かせるということもどんなに難しいことか。また、難しい転調のある曲も、さりげなく(その難しさを感じさせずに)、崩れることなく歌っている(これは別アルバム、Jerome Kern の曲で顕著)。単なるかわいこちゃん歌手、と決して侮るなかれ!!!

 ということで、ポップスを毛嫌いされてる方、Joni なんてジャズとは無関係と思っている方にも、一度は聴くことをお勧めします。ただ、ヴォーカルに刺激や興奮を求める方には、一切お勧めしません。これらが嫌いで Betty Carter が一番、なんて言っている人は、私はその人のセンスを疑います。

 Joni には他にも作曲家シリーズがありますが、もう1枚、Jerome Karn and Harry Warren も合わせてお勧めします。

 今なら Joni の CD がまだ Disc Union に沢山並んでいます。


辛口名盤紹介 へ戻る