Gershwin's World (Verve)
Herbie Hancock


1.Overture (Fascinating Rhythm)
2.It Ain't Necessarily So
3.The Man I Love
4.Here Come de Honey Man
5.St. Louis Blues
6.Lullaby
7.Blueberry Rhyme
8.It Ain't Necessarily So (Interlude)
9.Cotton Tail
10.Summertime
11.My Man's Gone Now
12.Prelude in C Sharp Minor
13.Concerto For Piano And Orchestra In G, 2nd
14.Embraceable You
Herbie Hancock(p)
Eddie Henderson(tp,flh)
Wayne Shorter(ss,ts)
James Carter(ss,ts)
Kenny Garrett(as)
Chick Corea(p)
Ron Carter(b)
Terri Lyne Carrington(ds)
Joni Mitchell(vo)
Stevie Wonder(harm,vo)
 others

1998/10/20 Inprint



〜 不可思議なハービー・ハンコック 〜

 Hancock がピアノを弾いていさえすれば、それはそれだけで素晴らしいのだが、どうもこういう鳴り物入りの大作は苦手だ。曲毎にメンバーが変わり、豪華この上無いのだが。オーケストラとの演奏はどれも私にはピンと来ないもので、私は評価する資格無し。やはり、小編成物や歌に興味が行ってしまう。

 このアルバムは Gershwin の Showcase と言うよりは、Hancock 自身の Showcase である。彼は実は Sextet 時代 (Blue Note のPrisoner に始まり、Warner の3部作を経て、CBS 初作 Sextant まで) に大きなこだわりを持っているのではないか?

 The Man I Love / Summertime は Joni Mitchell の歌だが、私はこの人の面白さがわからない。以前のオール・スターのバックのアルバム Mingus もわからなかった、それも豪華なバックだったのだが、いまだに世の中の評価の高さが理解できない。Stevie Wonder の歌とハーモニカも入っているが、歌よりもハーモニカに耳が行ってしまった私は、やはりこの辺の歌音痴か? Stevie の名誉のために言っておくが、彼が歌った St. Louis Blues のサビ(通常ハバネラで演奏される)はリ・ハーモナイズ(なんて生易しいものではないが)されていて、2小節ごとに音程をとるのが難しいコード(転調?)が続くつらいもの(だと思う)。Cathleen Battle の使い方 (Wordless vocal) も非常に贅沢だが、何となく物足りない。

 中で、Shorter 入っているコンボものは面白かった。最近の Shorter はお疲れぎみのように思えて、Hancock との Duo のアルバムも私には面白くなかったのだが、今度はかなりリカバリーして来ているように思える。皮肉にも Gershwin の曲でない Cotton Tail (Ellington) が最もStraight Ahead な演奏で、Shorter も狂っていた。T.L.Carrington の ds も素晴らしい。

 Corea との Duo も、題材が James P. Johnson のもので、期待したのだけれど今までに聴き慣れ過ぎていたためか、新鮮な感動はなかった。

 Ron Carter との Duo も、技術的/音楽的には非常にレベルの高いものなのであろうが、私にはスリルが感じられず、わくわくはしなかった。

 Solo の Embraceable You はピアニストに評価をお願いしたい。

 私はやはり Hancock はコンボの(サイド・マンでの)演奏が好きだ。特にどうでも良いような Jazz Rock (Fusion とは言わない)でのサイド・マンの演奏など (Donald Byrd の Up など)にスリルを感じる。これってやっぱりカタワなのだろうか? 考えてしまう。それとも、大作に対する私自身の偏見が、もう公平な評価を妨げるほどになってしまっているのだろうか?


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