First Place Again (Warner Brothers)
Paul Desmond


1.I Get A Kick Out Of You
2.For All We Know
3.Two Dgrees East Three Degrees West
4.Greensleeves
5.You Go To My Head
6.EAst Of The Sun
7.Time After Time
Paul Desmond(as)
Jim Hall(g)
Percy Heath(b)
Connie Kay(ds)

1959/9/5-7 Recording



〜 意外な一面を持つポール・デスモンド 〜

 Paul Desmond が人気投票のトップに返り咲いたのを記念しての作品。一連の RCA 作品に先んずる Jim Hall との初作。バックは Percy Heath と Connie Kay の MJQ コンビ。

 歴代の as 奏者の中で躊躇無く Pretty という形容詞をつけられるのは、Johnny Hodges と、この Paul Desmond が筆頭であろう。また、女性的なんて形容されることがあるが、それは Bill Evans に対するのと同様に全くの間違いである。細い

 音の故であろうが、あの音で均質の音質を保ち、あれほど澱み無くフレーズを吹くには大変な技術が必要と聞いている。似た音質の白人 as がいるが、私の印象は一言で以下のようなものである。Art Pepper : カミソリ、Lee Konitz : 無機質、Desmond : やさしさ。

 実は Desmond はカミソリの一面も持っているが、決して無機質であったことは無い。音質的には Parker 系の as とは両極に位置する。で、この作品であるが、スタンダード6曲と Blues 1曲が収録されている。いずれも Desmond - Jim Hall にピッタリの曲調。1曲目、I Get AKick Out of Youは比較的速めのテンポであるが、Desmond は澱み無く美しく吹いている。この人、全くシャリコマとは無縁のジャズの人である。Take Five のヒットは、収入面のプラスとは逆に、音楽面ではこの人にとって不幸だったかも知れない。Jim Hall との相性がいい。Jim Hall という人は誰とでも、どんな楽器とも協調できる希有の人だ。協調しながら強烈な個性を発揮しているのもこの人ならではである。

 その他、美しいスタンダードを、Desmond は音こそ穏やかでやさしいが、内容的にはハード・ボイルドに吹いている。

 難点はブルースか? 曲は John Lewis の 2 Degrees East, 3 Degrees West で、曲調は他の曲と違和感は全く無いが、ソロは白人のアルトの典型のように感じる。Art Pepper は別格として、あの無機質な Lee Konitz でさえ Blues を吹くと緊張感の欠けた世俗的な演奏になってしまう。Desmond も他の曲に比べて通俗フレーズの多い演奏のように感じる。

 何やかんや言っても、この演奏はお勧めです。他の Jim Hall とのコンビ全てと、D.Brubeck とのディズニー集 Dave Digs Disney と、マット・デニス集 Angel Eyes がお勧めです、Brubeck 自身は聴く価値はありませんが。


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