The Tatum Group Masterpieces, Vol. 8 (Verve → Pablo)
  Art Tatum & Ben Webster Quartet


1.Gone With the Wind
2.All the Things You Are
3.Have You Met Miss Jones?
4.My One and Only Love
5.Night and Day
6.My Ideal
7.Where or When
8.Gone With the Wind
9.Gone With the Wind [alternate take]
10.Have You Met Miss Jones? [alternate take]
Art Tatum(p)
Ben Webster(ts)
Red Callender(b)
Bill Douglass(ds)

1956/9/11 Recording



〜 巨人の共演、意外な演奏 〜

 スイング時代の大物2人がモダン・ジャズの時代(1956年)になって録音したもの。大スタンダード7曲(ミディアム以下のテンポ)を淡々と演奏している。多くの方はこの2人の名前は聞いても実際の演奏を聴く機会は少ないんじゃないかと思いますが、これはお勧めです。

 本当に素晴らしい。こんな境地には逆立ちしたってなれっこない。Ben はアドリブらしいアドリブはあまりせず、メロディを本人独特のサブ・トーンであっさりと吹く。まかり間違えばサム・テイラーになってしまう所を、ジャズ以外の何物でもない世界を展開している。

 Art Tatum と言うと、テクニック云々が常に言われていて、事実、他のほとんどのレコードではその速弾きとアルペジオに耳を奪われるのですが、これは例外で(勿論そういう部分もありますが)、穏やかに淡々と弾いています。彼はソロ・レコードが多いのですが、この場合は4人という編成も影響しているのかも知れません。

 もう一つ、All The Things You Are や Have You Met Miss Jones? のような曲をスイングの人達がどう弾くかも興味がありましたが、II-V とか AvailableNote Scale とかとは無縁の世界で非常にきれいに弾いています。こういうのを聴くと、ジャズの理論を議論することなんて馬鹿らしくなって来る。また、My One and Only Love も我々のコードとはだいぶ違う(本質的には同じですが、ベースの動きが違う印象)。同じような設定に、同じく Verve で、Teddy Wilson と Lester Young のレコードがあります。Lester がつらい時代のものですが、これは例外です。


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